三平は、一平竿で魚紳に止めをさす一瞬!
三平は魚紳を失う事を知っていた!
多くのなにもかもを...
時には師として、
時にはライバルであった魚紳
親しみのあった存在...
兄のように慕っていたのだから
もう引き返せない...
その魚紳が、今!
目の前に、自身の振り下ろすロッドによって魚紳は倒れているのだから...
谷地坊主は魚紳の鮎川財団へ連絡し
部下達に魚紳を連れて行かせるようにした
谷地坊主は白川の面倒を見ることとなる
なんなんだろう、この感じ...言葉では表現できない
三平は心の中でつぶやくのであった...
どうしてよいのか?これからどこへ進むべきなのか?
三平はもう言葉も何もかもを失った
今までの沢山の思い出が、
真っ暗な闇へと進んでいくのだから...
一平竿を片手に、トボトボと歩き出す
倉庫の脇の川へ
竿を振り下ろす
鮎釣りを始めた...
今の三平に出来ることは釣りしかなかった
思いも記憶も全てを失った...
今まで描かれなかった
絶対に釣れることのない釣りをはじめるのであった
三平は仕掛けを投じ
ゆっくりと、目を閉じた
もう何もかもが終わったと...
三平は港に吹く風を感じていた...
あの時と同じ香りがした...
かすかに、ユリの花の香りが漂う...
三平の心は暗闇から、ひとつだけ大きな白い光が広がった!
ゆっくり、目をひらくと...
ゆりっぺが、水面に漂っている
三平は叫んだ!
『ゆりっぺ!ゆりっぺっ!!』
三平は、川へ飛び込み、ゆりっぺを追い抱きしめた!
ゆりっぺから、ほんの僅かの息を感じる
ゆりっぺはかすかな声で
『さんちゃん...逢いに来てくれたんだ...うれしい...』
ゆりっぺは、ゆっくり力なく瞳を閉じ
涙を流した...
ゆりっぺにも、なにも残されていないことを三平は悟った
『このまま、一緒になろう...そして、永遠に結ばれよう...』
三平もそのまま、
ゆりっぺと共に海へと流れ進むことを望んだのであった
人は誰でも未知の世界に憧れ旅にでることも立ち止まることも
時として不条理に、時として不合理に幕を引かれ
恨み、妬み、どうしようもない後悔を持ちながら
不器用ながらさまよい歩きつづける
人が人を求め、互いの存在を感じ
繋がりの先にあるものが、いかなることであったとしても
その人が存在したことを深く心に刻むことができたならば
この物語の真意を、ご理解いただけたのかと思います
Fin
次回 釣りキチ三平の憂鬱
『ええっ!つづきがあるのか!?』
おたのしみに!
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あとがき
ナイナイナイナイ(゚Д゚)